はじめまして、埼玉で会社員をしながら、週末に子ども2人と奥多摩や秩父の低山を歩いている三輪直樹です。
以前は登山用品店で8年ほど働いていて、親御さんから「小学生なら何メートルくらいの山まで登れますか」とよく聞かれました。
実は私自身も、上の子が小学2年生のときに標高の数字だけで山を選んで失敗しています。
低い山なので楽だと思い込み、歩く時間をきちんと計算していませんでした。
下山は予定より大幅に遅れ、途中で「トイレに行きたい」と言われたのに、登山口までまだ1時間以上ありました。
それ以来、山を選ぶときは標高を最後に見ています。
この記事では、最初に見る歩行時間の計算方法と、次に見るトイレの調べ方を、公的な資料などの数字を使ってまとめました。
初めて小学生と山へ行く方が、候補の山を自分で比べられるようになる内容です。
目次
標高が低くても楽な山とは限りません
長野県と長野県山岳遭難防止対策協会が公表している「信州 山のグレーディング」は、登山ルートの体力度を1から10の10段階で評価した資料です。
この一覧表(令和8年4月更新)を見ると、標高と体力度が必ずしも比例しないことが分かります。
| ルート | 最高地点の標高 | コースタイム | ルート長 | 累積登り標高差 | 体力度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 北横岳(ロープウェイ利用) | 2,480m | 2.2時間 | 4.2km | 300m | 1 |
| 湯ノ丸山(地蔵峠から) | 2,101m | 2.3時間 | 4.2km | 410m | 1 |
| 高尾山(表参道) | 599m | 3.8時間 | 7.7km | 460m | 2 |
| 飯縄山(一ノ鳥居苑地から) | 1,917m | 4.8時間 | 7.9km | 830m | 2 |
| 霧ヶ峰(八島湿原から周回) | 1,925m | 6.2時間 | 13.3km | 620m | 3 |
標高599mの高尾山(表参道)が体力度2で、標高2,480mの北横岳(ロープウェイ利用)が体力度1です。
霧ヶ峰の周回は難易度こそ最も易しいAですが、歩く時間は6時間を超えます。
理由は計算式を見れば分かります。
同じ基準を使う岐阜県が、次の式を公開しています。
ルート定数=コースタイム(時間)×1.8+ルート全長(km)×0.3+累積登り標高差(km)×10+累積下り標高差(km)×0.6
このルート定数を10で割り、小数点以下を切り上げた数字が体力度です。
式の中に、山の高さそのものは入っていません。
効いてくるのは、どれだけの時間と距離を歩き、どれだけ登って下るかです。
もちろん、体力度1だから子ども向けという意味でもありません。
この評価は無雪期で天気が良いときのもので、子どもの体力を基準にした数字でもありません。
山と溪谷オンラインの親子登山の記事でも、北横岳を例に、岩が多く段差が大きいといった数式に表れない状況を踏まえて判断するよう書かれています。
最初に見るのは歩行時間です
コースタイムを子どもの足に直す
登山地図やガイドに載っているコースタイムは、大人が歩く場合の目安です。
先ほどの山と溪谷オンラインの記事では、子どもの休憩時間や歩く速さを考えると、一般のコースタイムの1.5〜2倍が妥当だとされています。
るるぶKidsの親子登山の特集にも、小学生以上の歩行時間は大人の1.5倍程度になってくるとあります。
我が家では、低学年なら2倍、高学年なら1.5倍で計算しています。
先ほどのルートに当てはめると、次のようになります。
| ルート | コースタイム | 1.5倍 | 2倍 |
|---|---|---|---|
| 北横岳(ロープウェイ利用) | 2.2時間 | 3時間18分 | 4時間24分 |
| 湯ノ丸山(地蔵峠から) | 2.3時間 | 3時間27分 | 4時間36分 |
| 高尾山(表参道) | 3.8時間 | 5時間42分 | 7時間36分 |
| 飯縄山(一ノ鳥居苑地から) | 4.8時間 | 7時間12分 | 9時間36分 |
高尾山は手軽な山という印象がありますが、麓から歩いて往復すると、低学年の子には丸一日がかりの計算です。
ケーブルカーやリフトを組み合わせるだけで、印象はかなり変わります。
何時間までなら歩けるのか
子どもが一日に歩ける時間は、学年だけでは決まりません。
それでも目安がないと計画を立てられないので、私は次の2つを参考にしています。
1つ目は、山と溪谷オンラインの記事で紹介されている「MK法」です。
親子登山を続けてきた筆者が経験をもとに作った指標で、対象は2歳から7歳(小学1〜2年生)くらいまでです。
登りの累積標高差は(年齢−1)×100m、距離は年齢と同じkm数、行動時間は年齢+1時間で、休憩時間を含みます。
7歳に当てはめると、累積標高差600m、距離7km、行動時間8時間です。
ただし、これは1日の行動量の上限です。
初めての登山なら、我が家はその半分くらいの4時間以内に収めます。
「もっと歩きたかった」で終わるくらいが、次につながると感じています。
2つ目は、山頂までにかかる時間です。
親子向けの山選びについては、濱西慎一さんがトレッキングの記事をまとめているnoteにも、1〜2時間程度で山頂に着ける山を目安にしつつ、当日の様子を見て調整するという考え方が書かれています。
大人のコースタイムか子どもの実時間かは明記されていないので、私は子どもの足で1〜2時間と読んでいます。
片道2時間で登れば往復は4時間前後になり、MK法の上限の半分とも合います。
帰りの時刻から逆算する
歩く時間が出たら、登山口に戻る時刻を決めます。
奥多摩観光協会は早出早着を基本とし、午前9時には登山口に着くよう呼びかけています。
我が家のルールは、15時までに登山口へ戻ることです。
秋や冬は日没が早いので、季節によってさらに前倒しします。
9時に歩き始めて15時に戻るなら、使える時間は6時間です。
ここから昼食の40分を引くと、残りは5時間20分になります。
この範囲に2倍計算の時間が収まらないなら、低学年の子と歩く候補からは外します。
先ほどの表でいえば、高尾山の表参道を麓から往復する計画は、低学年だと収まりません。
次に見るのはトイレの位置です
「あるかどうか」より「何分おきにあるか」
歩行時間の次にトイレを調べる理由は単純で、子どもは大人のように先を読んで行動できないからです。
「さっきの所で行っておけばよかった」は、我が家でも何度もありました。
同じ地域でも、コースによってトイレの状況は大きく違います。
奥多摩観光協会と東京都御岳ビジターセンターの案内から、例を挙げます。
| コース | 歩く時間の目安 | トイレの状況 |
|---|---|---|
| 川苔山 | 7時間30分 | コース上になし。入山前に済ませるよう案内 |
| 御前山 | 7時間 | 山頂になし。山頂から15分ほど下った避難小屋 |
| 大岳山(御岳山側から) | 5時間 | 4か所。大嶽神社近くのトイレは手洗い場なし |
| 御岳山のロックガーデン | 2時間30分 | 途中に休憩所とトイレあり |
上の3つは、小学生との最初の1座に選ぶコースではありません。
トイレの差を見てもらうために並べました。
調べるときは、登山地図に印を書き入れ、トイレとトイレの間を子どもの足の時間に直します。
大人の足で1時間の区間は、低学年の子なら2時間です。
我が家では、子どもの足で90分を超える区間があるコースは、携帯トイレを使えるようになるまで選びません。
90分は私が決めた基準なので、お子さんの様子に合わせて変えてください。
情報は、観光協会や自治体、ビジターセンターの案内を見るのが確実です。
奥多摩観光協会は駐車場とトイレの案内図を用意していて、東京都御岳ビジターセンターのコース紹介にも、御岳山周辺に12か所のトイレがあることと、その案内ページが載っています。
工事や季節で使えない期間がないかも、出発前に電話やウェブサイトで確かめておくと安心です。
トイレの不安で水を減らさない
親が気をつけたいのは、トイレが心配で水を飲ませるのを控えてしまうことです。
環境省九州環境局のサイトにある屋久島の登山者向けの案内では、トイレを我慢して水分補給を控えると脱水症状が起こる可能性があると注意を呼びかけています。
足がつる、頭痛がするといった症状から、自力で下山できなくなる場合もあるそうです。
「トイレが遠いから飲まないで」は、言わないと決めています。
先にトイレの位置と携帯トイレの準備を済ませておけば、水は普通に飲ませられます。
設備と持ち物も確かめる
山のトイレは、家や駅のトイレとはかなり違います。
奥多摩ビジターセンターによると、奥多摩の避難小屋に併設されたトイレはすべてくみ取り式で、紙も置いてありません。
避難小屋そのものも緊急避難用なので、休憩の予定地として計画に組み込むのは避けます。
丹沢では、神奈川県自然環境保全センターがトイレ紙の持ち帰りを呼びかけています。
山によって紙の扱いが違うので、持ち帰り前提で準備しておくと迷いません。
我が家のザックには、次のものを入れています。
- 携帯トイレ(1人1個)
- 小分けにしたトイレットペーパー
- 手洗いの代わりになるウェットティッシュ
- 使用済みのものを入れる、中身が見えない袋
- 目隠しにも使えるレインウェア
携帯トイレは、山で初めて使うと子どもが嫌がることがあります。
山と溪谷オンラインの別の親子登山の記事でも、次のトイレまで2時間以上かかることは珍しくなく、普段洋式トイレしか使わない子には難しいので、日頃の練習が必要だと書かれています。
我が家も、まず家のトイレで一度試しました。
笑いながらでいいので、仕組みを知っておくだけで当日の抵抗が減ります。
残りの条件は順番に確認します
歩行時間とトイレで候補を絞ったら、残りの条件を見ていきます。
私が確認している順番は次のとおりです。
| 順番 | 見る項目 | 確認すること |
|---|---|---|
| 1 | 歩行時間 | コースタイムの1.5〜2倍で、帰りの時刻に間に合うか |
| 2 | トイレ | 子どもの足で何分おきにあるか、設備はどうか |
| 3 | 途中で下りる方法 | ケーブルカーや短い下山路があるか |
| 4 | 累積標高差と距離 | 子どもの経験に対して大きすぎないか |
| 5 | 道の状態 | 岩場、鎖場、急な階段がないか |
| 6 | 標高 | 山頂の気温と服装、高山病のおそれはどうか |
標高を最後に置いていますが、見なくていいわけではありません。
高い場所ほど気温は下がるので、服装や防寒具を決める材料になります。
前述の山と溪谷オンラインの記事の前編でも、乗り物で高所へ上がれる山は手軽な一方、高山病のリスクがあると説明されています。
標高が低いから安全とも言えません。
警察庁の「令和7年における山岳遭難の概況等」によると、令和7年の遭難者は全国で3,623人でした。
態様別では道迷いが30.9%で最も多く、転倒が19.2%、滑落が17.3%と続きます。
同じ資料では、標高599mの高尾山の遭難者が106人で、過去5年平均の101.4人を上回っています。
利用者がとても多い山なので単純には比べられませんが、低い山でも事故は起きるという目安にはなります。
警察庁の資料は、休憩時間を確保した余裕のある日程を組むことや、トラブルの際に途中から下山できるルートを事前に把握することも求めています。
登山計画書は家族と共有したうえで、登山届ポストやインターネットなどで提出します。
奥多摩観光協会によると、奥多摩の提出箱は登山口になく、JR青梅線の各駅などに置かれています。
候補の山を比べる具体例
東京都御岳ビジターセンターが家族向けに挙げている、御岳山のロックガーデンで計算してみます。
歩行時間は2時間30分で、この数字に休憩時間は含まれません。
- 高学年(1.5倍)なら3時間45分
- 低学年(2倍)なら5時間
- 昼食の40分を足すと、4時間25分から5時間40分
- 9時に歩き始めれば、13時25分から14時40分ごろに戻れる計算
ここまでで、15時に戻るルールには収まります。
ただ、低学年の初回だと我が家の4時間を超えるので、まずは片道35分の武蔵御嶽神社までの往復(2倍で2時間20分)から始めます。
トイレは途中のロックガーデンに休憩所と一緒に設置されていて、御岳山周辺の案内ページで場所も確認できます。
道の状態を調べると、もう一つ分かることがあります。
同じエリアの七代の滝へ向かう道には、急な坂道や鉄の階段があります。
ビジターセンターは、小さなお子さん連れの場合はこの道を避け、長尾平から七代の滝を通らずにロックガーデンへ向かうルートを案内しています。
こうした情報は、標高の数字を見ているだけでは出てきません。
なお、歩行時間はビジターセンターを起点とした目安で、ケーブルカーの駅との間を歩く時間は別にかかります。
登山道の状況は変わることがあるので、出発前にビジターセンターの最新情報も見ておいてください。
まとめ
小学生と登る山を選ぶときは、標高の前に次の順番で確かめると、失敗をかなり減らせます。
- コースタイムを低学年は2倍、高学年は1.5倍にして、歩く時間を出す
- 登山口に戻る時刻から逆算して、計画が収まるか確かめる
- トイレの位置を地図に書き入れ、子どもの足で何分おきにあるかを見る
- 携帯トイレを練習しておき、トイレを理由に水を控えない
- 標高は、服装や防寒具、高山病への備えを決めるために最後に見る
ここで紹介した倍率や90分という基準は、あくまで我が家の目安です。
同じ学年でも歩ける時間には差があるので、最初は短いコースで実際の時間を測ってみてください。
一度測れば、次からはお子さん専用の倍率で計画を立てられます。
うちの下の子は、初めて登った山の標高をもう覚えていません。
覚えているのは、山頂で食べたおにぎりと、途中で見つけた虫の話ばかりです。
数字の大きな山は、もう少し先に取っておいても遅くないと思っています。
最終更新日 2026年11月2日 by nanala